
2000年 アメリカ /
スリラー
監督 : サム・ライミ
脚本 : ビリー・ボブ・ソーントン, トム・エッパーソン
出演 :
ケイト・ブランシェット, ジョヴァンニ・リビシ
グレッグ・キニア, キアヌ・リーヴス, ヒラリー・スワンク
-- DVD / 満足度 ★★★★☆
やはりサム・ライミの映像は味があって面白い。彼の作品との出会いはかれこれ10年以上も前、無性にホラー映画が観たくなり夜中にレンタル店まで自転車を走らせて行った時のこと。吸い寄せられるように手にした一本の作品、それが彼の処女作、『死霊のはらわた』だった。この作品を一度でも観たことがある方にならわかってもらえるだろうが、当時14、5歳だった私にとってその体験というのは衝撃以外の何ものでもなかった。過剰なまでに残酷な演出、目を覆いたくなるほどの恐怖シーン、以来それを超えるホラー映画に、私はまだ出会えていない。
そんな彼の積極性は、『ギフト』の中にもしっかり息づいている。尖った鉛筆と泥まみれの足、浮遊する半裸の死体、スクリーンに紡ぎ出される描写のいちいちが絶望感に溢れ、彼らしいパワフルなカメラワークがそこから生まれる不安感をより一層掻き立ててゆく。ただ怖いだけでない。まるで食虫花のような艶かしさをもって見る者を誘い込む映像の妙、不気味ながらも幻想的な世界につい引き込まれてしまう。しかし彼の巧みさは映像だけにとどまらない。登場人物の転がし方がまた上手いのだ。本作では孤独というテーマを軸に、人間同士の心の葛藤を描いている。小さな町の中で作り上げられる緊密な信頼関係と、その枠から脱した者が味わう疎外感。監督は、様々なバックグラウンドを持つ人物をぶつかり合わせることで、人間の脆さというものを炙り出している。
聞くところによると、『ギフト』は
ケイト・ブランシェットの出演がなければ世に出ることのなかった作品らしい。というのも、『
エリザベス 』での演技を高く買った監督が、主役に彼女を起用することを条件に製作を持ちかけたのだとか。道理でケイトの魅力がそのまま役に投影されているはずである。彼女の消え入るような透明感が、この作品を漂う空気感と非常によくマッチし、また彼女の出演を受けて続々と出演を決めたという脇役陣も、しっとりとこの世界の不気味さに溶け込んでいて凄い。エンディングのふんわりとした映像とは裏腹に、どこか湿り気を帯びた余韻を残す不思議な作品だった。